今後10~20年間に量子コンピュータは現在のコンピュータと共に、日常的に使用される計算機となると考 えられます。また、量子力学の最も特徴的な現象の1つである量子もつれは、安全なデータ通信のための暗 号化技術の根幹として応用されていきます。このように、量子力学を基本原理とした技術が社会に実装される時 代が近未来にやってくることは間違いありません。このテーマでは、IBMの量子コンピュータを用いて量子力学的効 果の観測を試みます。特に、量子もつれや、古典物理では起こらないベル不等式の破れの観測に挑みます。
未発見の素粒子である暗黒物質は、宇宙のエネルギーの約25パーセントを占めると考えられています。それ に対して、人類が観測している素粒子は宇宙のエネルギーの約5パーセントに過ぎません。このテーマではアン テナを自作し、天の川銀河の中性水素原子が発する21cm波長の電波を観測します。そして、観測結果を用 いて天の川銀河の回転速度を求めます。もし、銀河が何もない空間を回転していれば、半径と共に回転速度 は小さくなります。一方、空間が暗黒物質で満たされていれば、暗黒物質の重力によって回転速度が速くなります。この効果を利用して、銀河の回転速度から暗黒物質の密度を推定します。
素粒子の一種であるミューオンは、宇宙線の一部として降り注いでいます。手のひらを広げると1秒間に数個 貫通するほど身近な存在です。ミューオンは数kmの岩盤さえも通り抜ける高い透過力を持ち、X線では透 視が難しい物質量の大きい物体の内部を可視化することも可能です。実際に、宇宙線ミューオンを活用 したピラミッドや古墳の内部調査、さらには福島第一原発の炉心の透視が行われています。このテーマでは、 放射線シミュレータであるPHITSを用いて、ミューオン透視技術の性能を評価します。
人間とAIはどのように、どの程度、日本語テキストを理解しているのだろうか?この疑問に答えるため、AIで作成した文章を統計手法を用いて分析し、人間が作成する文章との違いを評価します。
素粒子をセンサーで捕え、コンピュータでデータを取得するにはいくつかの回路要素を用います。センサーからのアナログ信号をデジタル情報に変換し、FPGAなどの集積回路でデジタル情報を処理し、コンピュータにデータを転送する必要があります。これらの一連の回路を設計し、ブレッドボード上に回路を再現することで各要素の機能を確認しました。また、温度や湿度など、検出器が設置されている環境をモニターするためのシステムをRaspberry Piを用いて構築しました。
人間とAIはどのように、どの程度、日本語テキストを理解しているのだろうか?この疑問を調査するため、ChatGPTで異なる難易度の短文を100文作成しました。そして、新居浜高専の学生45人による読解を行い、文章の難易度の認識についてChatGPTと比較を行いました。また、Google社が開発を行っている大規模言語モデルであるBERTを用いて、BERTが各単語をどの程度結び付けながら文章理解を行っているのかについて調査を行いました。
量子コンピュータは量子もつれを用いた新しい計算機です。IBMの量子コンピュータを用いて2量子ビットのもつれを観測し、シミュレーションの予想と一致していることを確認しました。
ミューオンは素粒子の1つで、電子の200倍の質量を持つ荷電粒子です。ミューオンは数キロメートルの岩盤も透過するほど透過力が高いため、近年、非破壊検査に使用され始めています。本研究では、放射線シミュレータであるPHITSを用いて、ミューオンの透過力を評価しました。
Zipf則は、テキストに出てくる単語の出現数は出現順位のべき乗に比例する、という言語に不変な性質と考えられています。テキスト・データをZipf則の一致度合いを定量的に比較するためには、単語の出現数に対する不定性を正確に評価しておく必要があります。しかし、単語の出現数に対する不定性は、文法や人間の思考によるバイアスがあるため、データを用いて評価しなければいけません。本研究では、英語テキストに出てくる単語の出現数に対する不定性を評価し、Zipf則との一致度合いを定量的に評価しました。そして、2025年3月に開催された情報処理学会で発表を行いました[リンク] 。